影の時間。
四畳半くらいの展示室。一角に金属製の鳥籠とガラスを嵌めたフレーム。プロジェクター。白い壁に映されるのは、鳥籠とフレームの影、雪のように降り続く無数の羽毛の影、の映像。
空の鳥籠。
窓枠に切りとられた空からひたすら降り続く、降り積もることのない鳥の羽毛。
ここにあるのはその影ばかり。何一つ実体はない。
空はないのに空の気配がし、鳥はいないのに鳥の気配がし、滅亡はないのに滅亡の気配がする。
ひたすら続く静かな時間。人の話し声はもとより、不用意にたてる物音さえ邪魔で邪魔で仕方がない。
そんな空間が成立していたことが何だか驚きだった。
展示室を出て、通りを歩きながら、人間とはなんて騒がしくうるさいのかと思った。
生きていることはそういうことだ。
川端康成の短編だったか、自分の妻と子にいっさいの音をたてることを禁じた男の話があった。
だから食べることも歩くことも動くことも、ついには心臓を動かすこともできなくなって、みんな死んでしまった。
その話を思い出した。
沈黙や静寂は、聞こえない音を聞くためにあるのかもしれないとも思った。
田口賢治展 空間彫刻[記憶の彷徨op.2]迷妄する鳥/記憶の彷徨
2008.12.8ー13 巷房2・階段下(銀座1−9−8 奥野ビルB1)
空の鳥籠。
窓枠に切りとられた空からひたすら降り続く、降り積もることのない鳥の羽毛。
ここにあるのはその影ばかり。何一つ実体はない。
空はないのに空の気配がし、鳥はいないのに鳥の気配がし、滅亡はないのに滅亡の気配がする。
ひたすら続く静かな時間。人の話し声はもとより、不用意にたてる物音さえ邪魔で邪魔で仕方がない。
そんな空間が成立していたことが何だか驚きだった。
展示室を出て、通りを歩きながら、人間とはなんて騒がしくうるさいのかと思った。
生きていることはそういうことだ。
川端康成の短編だったか、自分の妻と子にいっさいの音をたてることを禁じた男の話があった。
だから食べることも歩くことも動くことも、ついには心臓を動かすこともできなくなって、みんな死んでしまった。
その話を思い出した。
沈黙や静寂は、聞こえない音を聞くためにあるのかもしれないとも思った。
田口賢治展 空間彫刻[記憶の彷徨op.2]迷妄する鳥/記憶の彷徨
2008.12.8ー13 巷房2・階段下(銀座1−9−8 奥野ビルB1)
by kuukazoo
| 2008-12-12 02:43
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